Works08

Vessel(Matsudo Apartments) ヴェッセル(松戸の集合住宅)
Vessel(Matsudo Apartments) ヴェッセル(松戸の集合住宅)
Vessel(Matsudo Apartments) ヴェッセル(松戸の集合住宅)
Vessel(Matsudo Apartments) ヴェッセル(松戸の集合住宅)
Vessel(Matsudo Apartments) ヴェッセル(松戸の集合住宅)

Vessel(Matsudo Apartments)|ヴェッセル(松戸の集合住宅)
Matsudo,Chiba,2002-2006

私が初めて設計した建築である。
施主とは世界の名作建築を探訪する旅の途中、フィンランド・ヘルシンキ駅で偶然出会い、
帰国後に依頼を受け実現に至った。

〈明るく光の入る建築〉
馬橋駅に近い川と線路敷きに挟まれた敷地に建つ賃貸併用住宅。
施主は元々この土地で木造住宅の1階に住み、2階を貸していた。
建替えにあたり、事業上の全てにおいてリスクの少ない計画が求められ、珍重に検討を重ねた。
施主が特に要望したのは木造と同程度の予算でRC造を実現することと、明るく光の入る家に住むことだった。
1階はワンルーム賃貸を3戸、同じく2階はワンルーム賃貸を3戸、3階は屋上庭園を有するオーナー住戸とする構成。

まず構造形式を鉄筋量が劇的に少なくてすむリブ付き壁式構造に決めて設計をはじめた。
2.7m×3.6m(6畳大)のグリッドをモデュールにして、グリッドを縦3列に並べて1賃貸住戸(18畳大)とし、それを横3列に短冊状に並べて、
合計9グリッドからなる単純な長方形を基準階平面とした。
次に恒久的な眺望が得られる線路敷き側をモデュール短辺として、それぞれのグリッドに大きな開口部を設けた。
構造壁は壁式構造のルールに従い最小限に、かつ二軸対象で均等配置することにより最大限の開口部を得ながら、
同時に鉄筋・型枠・コンクリート等の材料と職人の施工手間を最小限にして工事費を抑える効果を狙った。
同じく工事費を抑えるため、家具や間仕切りを最小限にする間取りを考え、内外の壁と天井はコンクリート打放しとし、
打放し補修はいっさい行わなかった。

施主が住む3階は、1・2階と同じ構造ルールに従いながらも、水回り・テラス・屋外階段・トップライト等のスペースが、
9グリッドからなる単純な長方形から外へ自由に飛び出したイレギュラーな平面となった。
3階平面は四隅のグリッドをプライベートスペース、残った十字部分をパブリックスペースとする構成とし、
十字部分の中心のグリッド=ダイニングの上部を全てトップライトとして、明るく光の入る建築をめざした。

建物のヴォリュームはシンプルな箱型からスタートしたが、必要なヴォリュームが付け足され、最終的にはダイナミックで彫塑的な外観となった。
1・2階の賃貸住戸は30㎡と広めのワンルームとし、近隣の賃貸との差別化を図った。
また、妻側住戸と中央住戸では意匠や床高さを変えており、それぞれの住戸の特性を生かすよう考えた。
さらに、一部の乾式戸境壁を撤去すれば、3戸のワンルーム賃貸を1戸のファミリー賃貸へ改修が可能であり、
あらゆる将来のリスクに対して可能な限り配慮した計画としている。