

















L'Arco(Haba House) | ラルコ(羽場邸)
Musashino,Tokyo,2011-2016
〈1枚の壁をめぐる職と住〉
職住一体の住宅である。
娘の誕生がきっかけで、この家の計画がはじまった。敷地を初めて見に行くと、そこには酒屋を営む築30年の店舗併設の住宅が建っていた。
開けた見晴らしがよい十字路の南西角地。陽当たりも良く、私道を挟んだ西側の緑地の緑が青々と繁っている。
ここに建築設計の仕事場を併設した我が家を建てたいと思った。そして、それはピラミッドや中世の教会のように時代を超えて存在する建築にしたい。
そのため、流行に左右されない単純な幾何学を用いて、大地から隆起してできたかのような力強い建築をめざした。
敷地は24坪。駐車スペースを考慮しながら、建ぺい率いっぱいである6m角の正方形平面をベースに決めて、設計をはじめた。
建ぺい率は角地緩和を受けているももの、容積率は変わらない。その差を利用して、容積に参入されない吹抜けと、階段を絡めた空間をスタディし、
ちょうど平面の1/3のライン上に全階を突き抜けて立ち上がる高さ9mの1枚の壁というアイデアに行き着いた。
壁の手前と奥では空間の質が異なり、様々な場所が生まれる。
この壁にゲートの役割を持たせ、手前と奥とを行き来することで職と住のオンオフが緩やかに切り替えられる。
吹抜け上部には全面トップライトを設け、ここから各室は採光を得る。
吹抜けに外部空間的な役割を持たせ、各部屋へのハブとすることで切り替えの効果を狙った。
同じ考えから2階へは必ずテラスを介し、西側の緑地を見ながら行き来する動線としている。
周辺環境に対しては、敷地境界の3カ所に花壇を設け、緑地の緑と繋げながらお互いに引き立てあう関係を模索した。
常緑樹が多く繁る緑地に対して補色である褐色の建物とすることで象徴的な街のランドマークになることをめざした。
手の痕跡と温かみを併せ持つレンガのような風合いのコンクリートとするため、型枠はあえて普通ベニヤ合板を使用し、褐色の顔料を現場投入して打設した。
同じ理由からPコン跡のモルタル詰めや、打放しの補修は一切行わなかった。
1枚の壁に穿たれた直径4mの穴は、各階に採り入れる光の量や人の動線を意識しながら、アーチ形式の開口としている。
イタリア語でアーチを意味する「L’Arco」が、この建築の名前となった。